刑事事件とDNA鑑定
1日あたりに約787件のDNA鑑定
警察の犯罪捜査においてDNA鑑定は欠くことができない技術になっています。
犯罪現場に残された、血痕・毛髪・唾液・精液・犯人が触れた可能性のあるものなどから、DNAを抽出して解析することで、DNAの持ち主(1人の人間)を特定することが可能なためです。
平成26年版の警察白書によると、警察が実施したDNA鑑定の件数は28万7285件にのぼり、1日あたりに換算すると約787件のDNA鑑定が実施されていることになります。
犯罪現場から得られたDNAと1人の人間のDNAが一致する確率は、統計学的に約4兆7000億分の1と言われており、世界の人口が約73億人であることからも、 いかにDNA鑑定による個人特定が有効であるのかは言うに及びません。
また近年、DNAを解析する領域がより広範囲になっているため、当社が行う個人特定のDNA鑑定では 「1京分の1」とか「1垓分の1」のような天文学的確率で個人特定が行われています。
では刑事事件で、我々民間の鑑定会社がDNA鑑定の分野において、個人の方々にとってどのような役割を果たしているのか、その一部を紹介します。
1.自分のDNAが適正に鑑定されたかどうかの確認
何らかの事件であなたが疑われた場合、綿棒を使って口の中からDNAが採取され、科捜研でDNA鑑定が行われます。
これは事件現場から採取されたDNAとあなたのDNAが一致するかどうかを調べるために行われます。
その結果、DNAが一致した場合、あなたはほぼ確実に事件の犯人として扱われることになるでしょう。
しかし、DNAは目で見ることができないため、あなたのDNAが適正に鑑定が行われたかどうかを確認する方法はなく、 また、DNAサンプルとして提出された綿棒を取り違えるようなミスがあったかどうかを確認することもできません。
そのような時、あなたは弁護士を通して、民間のDNA鑑定会社に自分のDNAの確認検査を依頼することができます。
しかし、拘留中は、DNAサンプルとして綿棒や毛髪を弁護士に提出することができない場合もあるため、 自宅であなたが使用していた歯ブラシやヒゲソリでDNA鑑定を行ったり、 あなたの両親のDNAを提出してもらい、科捜研の鑑定書に書かれているあなたのDNAと親子鑑定を行うなどで、 あなたのDNAが適正に鑑定されたものかどうかの確認検査を行っています。
2.接触によるDNA付着の再現試験
強制わいせつ事件や強姦事件では、「服の上から胸を強く揉まれた」「スカートを無理矢理引きずり下ろされた」 「スカートの中に手を入れられ下着の上から陰部を触れられた」など、警察では被害者女性の証言に基づいて、 女性の衣服や下着で犯人が直接触れた部分からDNAを採取し、DNA鑑定を行うことで犯人を特定します。
しかし、衣服や下着を掴んだり、引っ張ったり、触れたりする際に付着するDNAは少量であることが多いため、 警察が行ったDNA鑑定の結果が、適正なものであるかどうかを検証するため、我々民間のDNA鑑定会社も、 被害者女性の証言に基づいて被害状況を再現し、衣服や下着から同じようにDNA鑑定を行うことで、 警察のDNA鑑定結果との比較試験を行っています。
3.DNA採取のプロセス検証と鑑定結果の解釈と判断
事件現場や犯罪被害品などから、どのような方法でDNA採取が行われたのかについてプロセスの検証と、 どのようなDNA鑑定結果が得られたのかについて、その解釈と判断の検証を行っています。
DNAは非常にデリケートな物質であるため、DNAを採取する対象物の環境や衛生状態の影響を受けやすく、 また、適切な方法でDNA採取が行われる必要があるため、これらのプロセスが適当であるか否かを検証することはとても重要です。
さらに、犯罪捜査におけるDNA鑑定の結果は、常に完全なものであるとは限らないため、鑑定結果をどのように解釈し、 そして判断するのかが極めて重要になります。そして我々民間のDNA鑑定会社は、犯罪捜査で行われたDNA鑑定について、 DNA採取のプロセスと鑑定結果の解釈と判断が適正なものであるかどうかの検証を、弁護士からの依頼で行っています。