ダリの遺体掘り起し“娘”とDNA親子鑑定へ
巨匠ダリの遺体、
トレードマークの口ひげは「10時10分」の位置のまま AFP
【7月21日 AFP】シュルレアリスムの巨匠サルバドール・ダリ(Salvador Dali)の遺産を管理するガラ・サルバドール・ダリ財団 (Gala-Salvador Dali Foundation)は21日、ダリの遺体が前日に掘り起こされたことを受けて、本人のトレードマークだった口ひげが「(時計の針の)10時10分」の位置のままだったことを明らかにした。
http://www.afpbb.com/articles/-/3136606
サルバドール・ダリは、人妻だったガラ・エリュアールと恋に落ち、ガラが正式に離婚してから2年後の1934年、結婚することとなる。
1989年にスペインで亡くなったダリは妻との間に子供はいなかった。だが、自分がダリの娘だと主張する女性が現れた。
自分がダリの娘だと主張したのは、1956年生まれのスペイン人女性マリア・ピラル・アベル・マルティネス。
マリア曰く、当時家政婦だった彼女の母親が1955年にダリと不倫の関係にあって、自分が生まれたのだという。マリアは、タロット占い師で、2015年に初めて実父の法的認知訴訟を起こした。
ダリは1989年に85歳で亡くなったが、故人との血筋を特定できる生物学的なものはなにも遺していない。もし娘と認められれば、マリアはダリの唯一の子として膨大な遺産の一部を相続することになる。
マリアはダリが彼女の父親であることを証明するため、DNA鑑定をするよう申し立てを行った。 だがダリはすでに死んでいる。DNA鑑定をするには遺体を掘り起こさなければならない。
ダリの一人娘だと主張しているマリアの申し立てを受け、スペイン・マドリードの裁判所は、DNA鑑定のため、 埋葬されたダリの遺体の掘り起こしを命じていた。
ダリの出生地でもあるスペイン北東部フィゲラス(Figueras)のダリ劇場美術館(Dali Theatre-Museum)に埋葬された遺体の掘り起こしは、棺を覆う1トン超の墓石を動かすなど、困難な作業となった。
28年前に遺体の防腐処理を担当したナルシス・バルダレット(Narcis Bardalet)氏も、20日夜に行われた掘り起こし作業に立ち会った。
バルダレット氏は21日朝、スペイン・カタルーニャ(Catalonia)のラジオ局RAC1に対して「絹のハンカチを取り去った時、とても感動的だった。
ダリにとても会いたかったし、ものすごく圧倒された」と語るとともに、「奇跡のようだった、彼の口ひげはぴったりと10時10分の位置にあり、髪の毛もきれいなままだった」と明かした。
ダリ財団のリュイス・ペニュエラス(Lluis Penuelas)事務局長によると、ダリのDNAサンプルは「皮膚、爪、2本の骨」から採取されたという。(c)AFP
そもそも、亡くなった方からDNA鑑定できるのか
お墓の場合
現在日本の場合、ほとんどが火葬です。明治時代の火葬率は25%と記録されており、4家族中、1家だけが火葬でした。その後昭和23年に法律が制定され一気に火葬が進みました。
海外では、今も土葬が主流です。アメリカの場合約70%が土葬、EUでは80%が土葬、中東は宗教上で土葬を推奨しています。
土葬の場合、多くは防腐剤を入れミイラ化する場合も多いのです。数千年前のミイラからDNA採取に成功したニュースもありました。
ですから、海外の場合は、お墓からDNA採取される可能性が極めて高いのです。
では、日本の場合は、ご遺体は法律により火葬場で火葬にされます。日本の火葬場で主たる燃料は、ガス・灯油・重油で、炉内温度は600~800℃燃焼炎温度は約2,000℃にもなります。
ヒトの骨には、中心部に赤血球・白血球・血小板などを生成する造血細胞が存在します。これらの細胞は、おおよそ500℃以上で完全燃焼し無くなります。
ですから、燃焼骨はDNA鑑定できる可能性は極めて低くなります。
事件資料の場合
身元不明のご遺体が発見されDNA鑑定を行う場合は、軟部組織を目指します。
もし、白骨化されたご遺体の場合は、お骨の中心部にある造血細胞(上記説明)を目指します。
具体的には大腿骨や頭蓋骨の場合は奥歯を目指し残存する細胞を探します。
火災現場や交通事故で発見される燃焼遺体の場合は、低温で短時間燃焼が多いことから、残存された軟部組織皮や強固に守られた骨の内部組織から残存する細胞を 探し出しDNA鑑定の試料とします。
ですから、事件試料のお骨はDNA鑑定できる可能性は極めて高くなります。
DNA試料
DNA試料として・・
今回 “ダリのDNAサンプルは「皮膚、爪、2本の骨」から” と報道され、少しばかり驚かされました。
DNA検査を扱うわたしたちは、医師・考古学者とも交流があり、さまざまな事案について話し合いを行い、 最新の科学技術で歴史の検証を行います。そして考古学者のお墓に対する執拗なまでにも尊敬する姿を何度も拝見させて頂いています。
わたしたちのDNAラボでは、事件資料以外の埋葬墓室からDNA採取を行う場合、ご遺体の軟部組織や毛髪を目指します。
これは、ご遺体とご親族に対する敬意を示し、あくまで第三者がお墓を暴きDNA検査名目でご遺体の一部をお借りするのですから、ご遺体にダメージは与えたくはありません。
もし、私たちと日本の法医学者・考古学者なら、腐敗の影響はあるでしょうが、軟部組織である皮膚と爪が採取されたのなら、お骨は必要としないと思います。
なのに、お骨、持ち出しちゃったの?なんの為に?
裁判所の命令(お国の命令)ですが、DNA検査を行う者として、本当に・・・だったのでしょうか?