ゲノミクス ミケーネ人とミノア人

【ゲノミクス】ミケーネ人とミノア人
『Nature』2017年8月3日
Genomics: Of Mycenaeans and Minoans

 これまでの古代DNA研究で、初期ヨーロッパの主たる祖先は紀元前7千年紀からギリシャとアナトリア西部に居住していた複数の極めて類似した新石器時代の集団とされている。

 あまり、なじみは無いかも知れませんが、ミケーネ人とミノア人の歴史は、現代のファンタジー系の映画やゲームのRPGなどに多大な影響を与えていて、一目見れば「あぁ~」となる方は多いと思います。

 遺伝子検査によるルーツ検査では、不思議なことにミケーネ人のDNA特徴とよく似たDNA特徴を持つ日本人もいらっしゃるようです。

ミケーネ人のDNAと日本人のDNA

(小柄で屈強な体躯を持ち勤勉なミケーネ人)

 青銅器時代までのこれらの地域の歴史については、それほど明確になっておらず、ギリシャ本土とクレタ島の集団間の遺伝的類似性の程度と これらの集団と他の古代ヨーロッパ人集団や現代ギリシャ人との類縁関係など数々の疑問が残っている。

 その結果、ミノア人とミケーネ人が遺伝的に非常によく似ており、その約4分の3がアナトリア西部とエーゲ海地方の最初の新石器時代の農耕民を共通祖先としており、 残りの大部分が古代のコーカサス地方とイランの集団を祖先としていることが判明した。

 一方、ミケーネ人は、ミノア人とは異なり、青銅器時代にユーラシアのステップ(東ヨーロッパと北ユーラシアを含む地域)に居住していた人々を祖先とする者もいた。

 これらの解析から、現代ギリシャ人がミケーネ人と共通の祖先を持ちつつも、新石器時代前期の祖先からの系統がさらにある程度希釈されたことも判明した。

 ミケーネ人の特徴的なDNAが日本人からも観察されることもあるようです。不思議だったのですが、この研究報告を読むと北ロシア地区の祖先と繋がりがあり、そのDNAの一部を継承する日本人が居ると考えられるのでした。

 ※尚、遺伝子検査によるルーツ検査(家系検査/人種検査)は、日本の場合「差別問題」が存在するで、扱うことが出来ません。
 ↑残念です。
現在、問題に抵触しない遺伝子検査を企画中ですのでご期待下さい。

 PS: 祖先ルーツ検査、はじめました。こちら→祖先ルーツ検査

 ゲノミクスの研究

 では、ルーツ検査・考古学・再生医療などで用いられる「ゲノミクス」とはどのようなものなのかをご紹介します。

ゲノミクスとDNA

 その生物の遺伝情報を全て解読してみましょうと言うのが1980年代に始まりました。最初に完全解読されたのはファージと呼ばれるウイルスです。

 これ以降、さまざまな生物のゲノムを解読する事となり、ヒトゲノムの配列はヒトゲノムプロジェクトによって、2003年ヒトゲノム精密配列決定されました。

 すでに解読済みの全ゲノム塩基配列をもとに、その生物の全ての遺伝子の発現量を網羅的かつ統計的に解析することを「ゲノミクス」と呼びます。

 つまり解読されたゲノム情報をグループ化し詳細に調べましょうと言うことです。

 まず、全ゲノムをテーブルに乗せて全貌をみると、ただ、ひたすら塩基がズラーと並んでいるだけです。 そこで塩基配列をながめ、様々な特徴を見つけ出します。 たとえば、ここに塩基配列が繰り返している所があるとか、塩基配列が繋がっている所があるとか、そしてそこに一づつ名前を付けていきます。
 この技術をアノテーションと呼びます。

 そこから別の学問に進化し、ゲノム情報科学(ゲノムインフォマティクス)と呼ばれる分野が誕生しました。

 これをきっかけに、比較ゲノミクス、機能ゲノミクス、薬理ゲノミクス、毒物ゲノミクス、メタジェノミクス、プロテオーム等々、さまざまな分野の学問が誕生したのです。

 ~オームと~ミクス(ミックスではありません)

 生化学の世界で「~オーム」とか「~ミクス」と呼ばれる言葉が氾濫しています。

 では、この類の言葉の語原は何かと調べてみるとトランスクリプトーム(transcriptome)これは、一つの生物において転写されている全ての転写産物を意味する言葉で、Transcript=転写 + genome=ゲノムの融合語です。

 このトランスクリプトームは、非常にゴロが良く、おおいに受け入られました。そしてこれを真似て次々と融合語が生まれました。

 タンパク質やRNA、ペプチドなどの包括的な呼び方として、プロテオームやペプチドームなどが作られ、物質だけでなく代謝経路や代謝ネットワークであるメタボロームなども作られました。

 そして、トランスクリプトミクス(transcriptomics)が生み出されました。

 このトランスクリプトミクスは、ゲノム情報を利用して、一つの生物や細胞に含まれる全ての転写産物について網羅的・系統的に発現動態などを解析する意味を持ち、トランスクリプトームを扱う学問とされています。

 これらは、オーミクス (omics) と呼ばれ「研究対象+omics」という名称を持つ生物学の研究分野とされ、ゲノミクスとは、「遺伝子(gene)+omics」=genomicsゲノミクスと呼ばれるようになりました。

 私たちDNA JAPANでは、このゲノミクスの技術を用いた研究と開発も行っています。


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